近年では、法人組織になった美容室も増え、休みも週休二日制、休憩もぴっちりと取ることが出来る店も出現している美容業界ですが、個人経営の店などは、まだまだ有給はおろか、週に一度の休みや休憩時間に休憩を取るのもままらなないところも多いようです。
そのため、急に店に来なくなったり、メール1本で店をやめてしまう若い美容師さんも後を絶たないという話を聞くことがあります。雇用者や労働者が不利にならないために存在する「労働基準法」ですが、美容業界の現実は、実質的にその労働基準法が守られていないところが多いようです。中には労働基準法違反で美容室を訴えようとする人もいるようですが、果たして訴えることはできるのでしょうか?
目次
美容師が労働基準法で訴えることはできる?①まず残業代を請求する
朝早くから夜遅くまで働いている美容師さん。会社員のように定時を超えたら「残業代」が出たらどんなにいいかと思ったことはありませんか?
労働基準法では、労働時間は「1週間に40時間、1日に8時間」以上働かせてはいけないという決まりがあります。ただし特例として10人未満の事業所では、「44時間まで」となります。美容室は「商業」に入るため、従業員が10人以下の店ならこの特例に当てはまります。
1週間に44時間ということは、6日勤務として、1日7.3時間です。面貸し以外の多くの美容師さんが間違いなくこれ以上は働いてます。これ以上働いていて、残業代も出ないということは、2.5割増しで残業代を請求できる権利があります。
現に、店側が退職した美容師さんから500万円を請求されたケースもあるようです。
美容師が労働基準法で訴えることはできる?②内容証明で請求書を送る
ひとことに「訴える」と言っても、それは大変な労力となります。まず弁護士費用ですが、訴える金額にもよりますが、民事裁判の訴訟金額が100万円だとしたら着手金、成功報酬などで30~50万円は必要です。しかし、現在では、着手金なしなど良心的なところも出てきています。
残業代を払ってもらえない側になると、裁判でないと腹の虫は収まらないと思いますが、まずその前に「内容証明」で残業代を請求してみましょう。それにはタイムカードや、労働時間管理ソフト、メールの送受信などの証拠、それに給料明細、源泉徴収票などが必要となりますので、2年の時効が来る前に請求しましょう。すでに退職していて勤務表などがコピーできないときは、自分でExcelなどで作成したものや、メモなどでもOKです。
こちらもいまでは無料相談ができる弁護士さんなどが増えていますので、多少お金はかかってもプロに任せるのが賢明です。
こちらのほうも弁護士さんに頼んで、美容業界で実際に回収に成功した事例などが報告されています。
美容師が労働基準法で訴えることはできる?③裁判前に出来ること
それでも払ってもらえない場合、労働基準局に行き、まず是正勧告をしてもらいましょう。次に「労働審判」という方法があります。こちらは訴えた側に費用が発生しますが、訴訟に比べると安価です。裁判になる前にこちらで解決する場合も多いようです。
それでもダメな場合は民事裁判となります。こちらは莫大な費用もかかることですし、あくまでも最終決断としたほうがいいでしょう。
まとめ
美容師さんを巡る過酷な労働環境はいまに始まったことではありませんが、昔に比べると気軽に相談できる弁護士さんなどが増えてことで、内容証明で残業代を回収できるケースは増えてきているようです。ただしこちらも費用はかかってしまいますので、できれば労働基準局の「労働審判」で解決するケースが理想です。
夢を持って美容師さんになったあなたが、一刻も早く過酷な労働から開放されますように、また、未払いの残業代も回収できるよう、お力になれれば幸いです。