将来または近いうちに美容室の開業をお考えの方は、必ず開業の手続きについても把握しておきましょう。店舗の選定から美容器具の打ち合わせ、資金の融資など経営者としてやらなければいけないことが山ほどあります。また、個人で営業するのか法人として事務所を開設するのかでも手続きが異なるという煩雑さもあり、いざサロンを始めようと動いてみると想定外のこともたくさんあります。まずは、美容室の開業を計画している段階で、一般的なケースを想像し、自分だったらどうすべきかを考えるようにしましょう。
目次
美容室の開業手続きが間に合わないとどうなるの?
美容師の開業までに各機関への届出が遅れた、忘れていたという場合にはサロンの営業開始の許可がおりず、お客さんを招き入れられません。個人で経営を開始しており、従業員も自分だけの場合には迷惑を被るのは自分だけですので、大きな問題に発展するリスクは小さいと言えます。ただし、法人としてまたは従業員がすでにいる場合には、給料の支払い義務などがすでに生じますので、かなり大きな痛手を被ることになると考えておきましょう。また、返済や店舗の賃料などの支払い義務は、開業手続きが間に合わなくとも発生します。その機関は、サロンの収入がなく、手元の資金から支払わなければなりませんので、あとになって経営を圧迫してしまう可能性も考えられます。
美容室を開業するために必要な手続きと段取りー保健所ー
まず美容室の開業を行うにあたり、密に連携を取らなければならないのが保健所です。保健所には、美容室・サロンの営業を開始するにあたり、クリアしなければならない基準を設けており、書類での届出や職員による現地調査によってその審査を行っています。必要な書類も多くあり、場合によっては現地調査を経営者の立会のもとで行う、また許可が降りるまでにかなりの時間を要することも考えられますので、手続きと段取りについては詳しく把握しておくようにしましょう。
保健所への事前相談
まず営業を始める前に必ず行うべきなのが、保健所への事前相談です。この後に保健所への提出物などについて、詳しく紹介していきますが、事前に保健所へ足を運ぶことがもっとも重要になります。実は、手続きについては一般的に必要とされるものと、各自治体で決めているものがあり、開業における審査項目もまちまちです。そのような自治体のルールを確認し、必要な提出物をあらかじめ漏れなく把握するために事前相談は非常に重要です。
開設届けの提出
事前にクリアすべき項目を確認し、提出物を確認した後に、それぞれの届出を行います。基本的には1週間以上は保健所での書類チェックに時間を要し、その後営業許可がおりますので、営業日から逆算して余裕をもって提出しましょう。必要な書類は必須となっているものが4種類あり、施設平面図、従業員名簿、医師の診断書、登記簿謄本の届出が必要になります。これらの書類にサロンの設備を記載し、消毒設備があるかや地方自治体の要項をクリア内装になっているかを確認され、従業員名簿で必要な資格を有しているかを確認されることになります。さらに開設手数料もこの段階で支払いますので、しっかりと準備しておきましょう。
開設検査
書類の提出を行った段階で決められる開設検査の日時に、保健所の職員によって立入検査が行われます。事前に提出している書類を実際のサロンの設備を見比べ、構造や消毒設備などを細かく確認検査します。
確認書の発行
開設検査をパスした段階で、確認書の発行が行われます。基本的には、翌日から営業開始日までに発行されますので、営業に大きく影響することはないでしょう。ただし、構造や設備上問題ないという連絡を受けて、受領印を準備し、確認書を取りに行く流れになりますので注意しておきましょう。
消防署との関連
保健所とは別に、消防署との連携も必要になります。保健所では美容室の開業に必要な設備を確認しますが、消防署では防災設備の確認のために、消防検査をおこなっています。内装と外装工事を行うタイミングで、びつ用な防災設備の基準を満たしているかどうかのチェックがなされます。
美容室を開業するために必要な手続きと段取りー税務署ー
保健所や消防署などで美容室を開業できる建物や設備としての項目をクリアした後には、税務署へ必要書類を届け出る必要があります。税務署に届出が必要な書面のほとんどが、事業開始日を起算日として1ヶ月以内などのルールが定められています。サロンの営業が開始してからで良いと一息つきたくなるところですが、営業しながら事務処理をしなければならず、かなり神経を使う作業ですので注意が必要です。また、個人事業として開業するのか法人として経営するのかで届出が必要な書類も異なりますので、あらかじめ抑えておきましょう。
個人事業として開業する場合
基本的に「開業届」「給与支払事務所等の開設届出書」「青色申告承認申請書」「減価償却資産の償却方法の届出書」「棚卸資産の評価方法の届出書」の5つの書類の届出が必要になります。「開業届」「給与支払事務所等の開設届出書」は事業開始月から1カ月以内に、「青色申告承認申請書」は2カ月以内に所轄の税務署へ提出しましょう。さらに、「減価償却資産の償却方法の届出書」「棚卸資産の評価方法の届出書」については、最初の確定申告の日までに提出が必要になり、開業時期によってはかなり間が空いてしまいますので、忘れないよう注意が必要です。
法人として開業する場合
また法人として開業するためには、「給与支払事務所等の開設届出書」「法人設立届出書」「青色申告承認申請書」「減価償却資産の償却方法の届出書」「棚卸資産の評価方法の届出書」の5つの届出が必要であり、個人の場合とは違った書面が必要となります。提出する時期についても、設立後1カ月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」2カ月以内に「法人設立届出書」を所轄の税務署へ提出する必要があります。さらに、法人設立の日以降3ヶ月を経過した日または、当該事業年度終了の日の早い日の前日までに「青色申告承認申請書」を提出し、設立第1期の事業年度の確定申告書の提出期限までに「減価償却資産の償却方法の届出書」、「棚卸資産の評価方法の届出書」の届出が必要となります。
その他で美容室の開業に必要な手続きとは?
自身で美容室を開業し、初めから多くの従業員を雇い入れるケースはあまりないと思いますが、スタッフを多く雇う構想がある場合には、さらに各関係機関への手続きや届出が必要になります。基本的に健康保険、雇用保険、労災保険へ従業員を加入させる義務がありますので、自分のことだけで手一杯にならないように注意しておくようにしましょう。健康保険や厚生年金保険に加入義務については、個人経営で常時5人以上の従業員を雇っている場合、雇用している事業所法人企業で常時1人以上の従業員を雇っている場合などが対象となります。詳細については、所轄の社会保険事務所で確認する必要があります。
美容室開業の手続きには俯瞰の目が必要?
ここまで保健所や税務署、保険関係の事務所との手続きや段階について紹介してきましたが、経営者として美容室を開業するためには、同時並行でやらなければいけないことがたくさんあります。必ず事前に必要な段取りを組み、漏れがないかを随時チェックするようにしましょう。サロンを開業するまでに店舗をどこにするかを不動産関係者と話し合い、どんな内装工事の打ち合わせることで店舗の立地と内装のイメージが完成します。さらに、美容器具業者との打ち合わせを行いながら初期費用を計算し、創業融資の手続きといったようにすべてが連動して動くことになります。初めからすべてのことをそつなくこなすイメージをもってしまうと、疲弊してしまうほどの作業量となりますので、必ずすでにサロンの経営を行っている方や中小企業診断士などの第三者の手を借りるようにしましょう。相談料や手間賃など多少出費が大きくなる懸念もありますが、美容室を開業してから発覚するよりも格段にお得です。ひとりで考えすぎずに、プロの手を借りることも念頭においておきましょう。
まとめ
自分の美容室を開業するにあたりかなり多くの届出が必要となり、時間も必要になることがお分かりいただけたのではないでしょうか?事実専門的で難しい内容の書面も多くあり、開業前の手続きに窮するまたは開業後に大きな問題になることも少なくありません。ただし、あらかじめ美容室の開業を考えている計画段階で、そのリスクの存在に気づいているだけで大きなアドバンテージと言えます。あとは常に各手続きを行っている段階で漏れがないかを常に確認し、信頼できる専門家に随時相談しておくことで、大きなミスを回避することができるでしょう。