美容室を開業するにあたり初期費用の準備やサロンのコンセプトも大切ですが、保健所の審査についてもしっかりと把握しておかなければなりません。美容室だけではありませんが、自分のお店を開設するためには必ず保健所へ開設届けという書面を提出し、営業の許可を得なければなりません。面積や消毒設備など事細かに基準が定められていますので、内装工事を行う前に要項を確認するようにしましょう。
目次
美容室を開設する際に提出する開業届とは?
まず美容室の開業する際に、保健所とは密に連携を取らなければなりません。保健所では美容室・サロンの営業を開始するにあたり、クリアしなければならない基準を設けており、開業届を提出した上で、職員による現地調査によってその基準を満たしているかを厳しく確認しています。開設にあたって届出が必要な書類は他にもあり許可がおりるまでにかなりの時間を要することも考えられますので、手続きと段取りについては詳しく把握しておくようにしましょう。
保健所への事前相談
まずサロンのコンセプトや内装のイメージを作る前に、保健所への事前相談を行いましょう。実は保健所が定めている美容室の開設基準ですが、自治体によって多少違いがあります。開業届などの提出物とそのフォーマットは自治体によって決められているため、要項の確認と書面の準備のために保健所にあらかじめ足を運んでおく必要があります。また、詳細は後述しますが、クリアすべき基準として照明や広さなども決められていますので、コンセプトを決め、内装工事を行う前にその基準は把握しておく必要があります。
開設届けの提出
クリアすべき項目を確認し、提出物を確認した後に開業届けとしてそれぞれの書面を提出します。この届出を行った後に1週間以上の時間を保健所は書類チェックのために要しますので、営業に支障が出ないようにちゅういしておきましょう。自治体によって変わりますが、基本的に届出が必須となっている書類は4種類あり、「施設平面図」「従業員名簿」「医師の診断書」「登記簿謄本」です。これらの書類にサロンの設立のために必要な内容を記載し、消毒設備があるかや地方自治体の要項をクリアした内装になっているかを確認されることになります。従業員名簿で必要な資格を有しているかを確認され、さらに開設手数料もこの段階で支払いますのであらかじめ準備しておきましょう。
開設検査
開業届を提出し、書面のチェックが完了した後に、保健所の職員が現地の検査を行います。届出の確認が済んだ段階で連絡があり、開設検査の日時についても指定されます。事前に提出している開業届をもとに実際のサロンの設備を見比べ、構造や消毒設備に問題がないかなどを細かく確認検査します。
確認書の発行
開設検査をパスした段階後に、確認書が発行されます。基本的には、翌日から営業開始日までに発行されるものですので、営業に大きく差し障るということはないでしょう。ただし、開設検査後に構造や設備や構造上の問題がないという連絡を受けて、受領印を持参して確認書を受け取りに保健所へ出向かなければなりませんので、時間は確保しておきましょう。
消防署との関連
消防署との連携も必要になりますので、事前に確認しておきましょう。開業届けをもとに必要な設備が備わっているかを保健所では確認しますが、消防署では美容室に防災設備が備わっているかを確認するため消防検査を行っています。内装工事を行う前の時点で、防災設備の基準を満たしているかどうかも確認しておく必要があります。
具体的には?美容室の開業届でチェックされる要項とは?
保健所へ事前相談をし、開業の手続きとして「施設平面図」「従業員名簿」「医師の診断書」「登記簿謄本」などの書面を提出した後にどのような点を確認されるのでしょうか?さきほども紹介した通り各自治体の保健所によって多少要項は異なりますので、今回は東京都が定める基準の一部紹介します。かなり細かい要項が並び、これを満たしていない場合には営業を開始できませんので、しっかりと確認しておきましょう。
施設平面図で確認される基準
美容室は清潔で安全に作業できるスペースである必要があります。そのため、作業スペースや消毒設備、照明設備などについて細かい基準が設けられています。
作業室面積
作業室面積は、有効面積(うちのりで計算)で13㎡以上なければならない。レジ、踏み込み、便所の面積は含まない。(個室を設ける場合は単独で13㎡以上が必要。)
客待ち場所
客待ち場所は、ケース、つい立等で作業室と明確に区画する。客待ち面積は作業室面積の6分の1以上が望ましい。その位置は、入口に近く、作業に支障のない場所が好ましい。作業室面積が13㎡の場合は、作業椅子6台までとし、1台増すごとに3㎡の面積が必要です。コールド待ち・美顔椅子も台数に含みます。
消毒器具
液量計(メスシリンダー)100ml(薬用)及び500ml(希釈水用)、消毒用バット、蓋付き容器、消毒薬剤を備えるこ
採光・照明
作業室は、採光・照明が十分であること。〔作業面の照度は100ルクス以上が必要〕
換気
換気を十分に行える構造設備とすること。〔二酸化炭素の基準:5000ppm以下〕
従業員名簿で確認される内容
従業員名簿では、美容師としての資格を有しているかどうかを確認されます。基本的には美容師の資格を有している証明として免許番号を記載すれば問題ありません。ただし、自治体によっては書面とあわせて、理美容師の免許証、および管理理美容師の修了証の本証の提示が必要になる場合もあります。
医師の診断書
美容室の開業にあたり、経営者の健康状態を把握するために届け出る書面です。意思の診断書にも、結核・皮膚疾患等伝染性疾病の有無に関する医師発行のものという規定がありますので、要件を満たしているかを確認しておきましょう。
開業届以外で美容室を開設するために必要なこととは
ここまで保健所への開業届の必要性とその基準について紹介してきましたが、美容室を開設するためにはその他にも同時並行でやらなければいけないことがたくさんあります。必ず事前に必要な段取りを組み、漏れがないかを随時チェックするようにしましょう。それぞれの準備がスムーズに行われていなければ、手続きが間に合わないなどの困難に見舞われる危険性があります。
物件選びから始める
まず美容室の開設を行う際には、どこにどんな物件を借りるかから決めていきましょう。物件を選定しすることで、サロンのコンセプトや初期費用の額が明確となり、資金計画を立てやすくなります。居抜き物件などを活用し、内装工事がさほどかからず、保健所の基準をクリアしている物件を選択できれば、美容室の開業届などの手続きが楽になります。イメージしている美容室のコンセプトにマッチするような物件でなければ、経営がおぼつかなく可能性もありますので、物件は慎重に選びましょう。
資金計画によって美容室が成功を決める
美容室の開業と聞くと経営開始後の努力次第とされがちですが、サロンの営業を始める前の資金計画によって成功するかどうかは決まっていると言われています。融資の相談をする時点で資金計画は根拠のあるものにしておく必要がありますし、明確な数字があることで融資額も変わってきます。初期費用にどのくらいの金額を投資し、どのくらい利益を見込める、そして月々いくら返していくかによって、思い通りの経営に近づいていきます。また、保健所への事前相談を怠り、経営までに開業届が間に合わないと返済だけが先行して発生する期間が生まれることにも繋がります。
美容室の広告も準備する
最近ではSNSの活用などにより広告の種類も多様化しています。依頼する業者によって経営の安定感に雲泥の差が生まれますので、慎重に検討しましょう。契約形態や依頼するサービス内容によって、どのタイミングでどのくらいのお金が必要になるかという準備や手続きも変わってきますので、しっかりと開業前の準備に盛り込んでおきましょう。
美容室の開業届の提出などの準備には第三者の力が必要
自分の美容室を開設するにあたり、開業届などの必要書類や資金の準備などの情報を集めておくことも大切ですが、すべてを一人でやろうとしない心構えも重要です。常に各手続きについて漏れがないかを確認しながら、協力してもらえる範囲については第三者の力を借りるようにしましょう。どこに店舗を構えるかについては不動産関係者、美容器具のディーラー、融資関係について日本政策金融公庫や商工会議所など、力になってくれるプロフェッショナルは随所に存在します。全体を把握しながら、ひとつひとつの手続きを慎重に進めていきましょう。
まとめ
美容室を開設するために必要な開業届の重要性をお分かりいただけたでしょうか。保健所が定めている基準をクリアしない限り、美容室の経営を開始することはできません。また、事前に確認書を受け取っていない状態では、お客さんを招き入れられないため経営に大きく影響するリスクも存在します。まずは、各自治体の保健所によって事細かに基準が決められていること、開業届によってどのような点を確認されるのかを把握しておきましょう。あらかじめ、必要な施設が頭に入っているだけでサロンのコンセプトや内装のイメージの枠組みとして活用することができます。